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動画プラットフォームの収益構造を徹底研究!

皆様、こんにちは!
今回は動画プラットフォーム事業者の収益構造を読むとく上で、ナスダックに上場している中国大手の動画プラットフォームYoukuTudouについて分析してみたいと思います。ご存じのとおり、中国ではYouTubeを見ることが出来ないため、様々な現地の動画プラットフォームが立ち上がっていますが、その中でも大手(おそらく1位)のポジションにいるのがYoukuTudouです。

 

それではまずはYoukuTudouの業績推移を見てみましょう。
まだ2015年10-12月の決算は発表していないため、2015年7-9月までの業績となります。

YoukuTudouの業績推移

(出所:YoukuTudouのIR情報より当社作成)

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コンテンツ費用、通信費用の負担が大きい
売上の中心は広告収入で、YouTube同様に広告課金が中心となっており、直近でConsumerやその他の収入の割合が増えてきているのが分かります。一方で、原価面を見てみると、通信費用とコンテンツ費用の割合が大きく、売上原価だけで売上の80-100%を占める状況が続いています。特に割合が大きいコンテンツ費用に関しては、国内外のTVドラマやオリジナルコンテンツの買い付けを行っていることから、YouTubeのように純粋に広告売上の一定割合をレベニューシェアしているという訳ではなく、レベニューシェアの部分や固定で払っている部分が入り混じっているのではないかと思います。なお、2015年2Qの決算電話会議ではコンテンツ費用のうちUGCやPGC(一般視聴者やプロによるコンテンツ投稿)は10%未満とコメントしており、ほとんどが先述の優良コンテンツの買い付けに要した費用のようです。一方で、UGCやPGCの視聴回数に占める割合は53%とコメントしているため、YouTubeに比べてコンテンツ投稿者への還元率はそれほど高くなさそうです。その辺の構造はUGCやPGCで成り立っているYouTubeと大きく違いますね。

YoukuTudouの売上原価内訳(2014年4Q~2015年3Q平均)

(出所:YoukuTudouのIR情報より当社作成)

 

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他プラットフォームの収益構造は不明だが、概ねYoukuTudou同様の収益構造と推察
YouTubeの収益情報は開示されていないために収益構造は分かりませんが、パートナープログラムにより広告収益やYouTubeRed収益の55%をコンテンツ提供者に還元しているといわれています。チャンネルが一定規模にならないとパートナープログラムには参加できないため、実際のコンテンツ費用は55%よりは低いと思われますが、YoukuTudou同様にコンテンツ費用の負担はそれなりに大きいと推察されます。また、通信費用に関しても規模の経済がかなり働いて低減しているとみられる一方で、広告掲載の頻度は他社プラットフォームに比べてそれほど高くないために、売上に対する通信費用の割合もそれなりに高いと推察されます。おそらくYouTubeのみならずUGC&広告課金モデルで動画プラットフォームで事業を行っている会社はほぼこの収益構造に近いのではないかと思います。

 

テレビ局と比較した場合、まだテレビ局が収益構造上は有利な状況
これをテレビ放送局と比べた場合はどうでしょうか?2015年度1Q-3Qの日本テレビホールディングスの決算の中で番組制作費用(≒コンテンツ費用)と支払電波料(≒通信費用)の売上(放送収入+番組販売収入‐代理店手数料)に対する割合はそれぞれ45%、14%となっており、YoukuTudou(及びおそらく他のUGC&広告課金プラットフォーム)のコンテンツ費用や通信費用の割合に比べて若干低くなっています。あくまでもコンテンツ費用と通信費用のみの比較なので、単純比較は難しいのかもしれませんが、大きな広告収入に支えられていることもあり、テレビ局は収益構造上まだまだ優位な状況にあると言えそうです。

YoukuTudou、日テレ放送事業のコンテンツ費用、通信費用内訳

(出所:YoukuTudou、日本テレビホールディングスのIR情報より当社作成)

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収益構造改善に向けてYoukuTudouは新たなマネタイズ手段の確立中
売上が増えた時に利益が増える割合を限界利益率と言いますが、YoukuTudouでいえば粗利益率が近い概念なのかなと思います。YoukuTudouの2014年4Q~2015年3Qの平均粗利益率は14%であり、売上に沿ってコンテンツ費用や通信費用が増えるので、収益構造上はかなり厳しく見えてしまいます。こうした状況もあってか、YoukuTudouはここ数年新たなマネタイズ手段を確立しています。具体的には、定額課金サービス、コンテンツマーケティング(オリジナルコンテンツでのスポンサーとのタイアップ等)、Videoコマースなどです。Videoコマースではアリババが出資したということもあり、アリババのマーケットプレイスと連動させたVideoコマースを展開しています。また、有望なIPに投資し、YoukuTudouの中でドラマ化する、スマホゲーム化するなどマルチフォーマットすることでIPの価値最大化するという取り組みも行っているようです。おそらく、これらの売上が「Consumer」のセグメントや「その他」のセグメントに計上されているとみられ、その構成比が増えてきています。

Netflixの限界利益率の高さが定額課金モデルの将来性を示唆
Netflixは限界利益率にあたるContribution marginをセグメント別に公表していますが、直近の決算で見ると、国内ストリーミング事業のContribution marginは34%となっており、YoukuTudouの粗利益率に比べてかなり高くなっています。ただ、4年前までの国内ストリーミング事業のContribution marginは10%台で、あくまで34%というのは現在の規模まで拡大した前提での話ですが、定額課金モデルであれば、究極的にはこの水準の限界利益率を目指せるということを証明しています。なお、Netflixは海外事業においては現地コンテンツの先行投資やプロモーションを積極的に行っているということもあり、限界利益率は-14%となっています。

YoukuTudou、Netflixの国内外の限界利益率

(出所:YoukuTudou、NetflixのIR情報より当社作成)

 

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結論:広告のみでの採算確立のハードルは高いが、収益多様化のポテンシャルは大きい。いずれにしても一定以上の視聴者規模は必要
結論として、動画プラットフォームの収益構造を考えるうえで、プラットフォームを差別化するコンテンツ費用はUGCであれ、優良コンテンツの調達であれコスト負担は大きく、また通信費用も割合も大きいため、単純に広告課金&レベニューシェアで採算を確保するのはYouTube並の規模にならない限りは難しいのかなと思いました。しかし、動画サービスはそれだけ視聴者の余暇時間に占める割合は大きいため、その中で定額課金への誘導や、Videoコマース、特定IPへのエンゲージメント拡大など、視聴者規模が大きくなれば他のマネタイズ手段は色々と出てくる可能性がありますし、その中で収益性を改善させていく余地は大きそうです。

YouTubeに関しては、YouTubeRedを始めた理由はマネタイズ目的というよりも単純に多様な消費者や動画クリエイターのニーズに応えたいというところから来ている気がしますが、どうなんでしょうか?

 

それではまた!